レビュー:「大正野球娘。(Taisho Baseball Girls) DVD」 [海外掲示板翻訳]
時は1925年(大正14年)。東邦星華高等女学院に通う鈴川小梅は親友である小笠原晶子の誘いで野球を始めることになった。きっかけは晶子の許婚である岩崎荘介が晶子に対して発した何気ない一言にあり、それは「女性に学歴など不要」で「主婦として家庭に入るべき」との、当時の社会ではごく一般的な考え方ながら男尊女卑の意識に強く支配されたものであった。内心これに反発した晶子は態度を硬化させ、許婚が打ち込む野球でもって彼の鼻を明かしてやり、旧態依然とした認識を改めさせようと思い立つ。
小梅もまた晶子の気持ちを知って共感し、その目標に賛同したのであったが、誘った晶子ともども野球のルールなどまるで知らなかった。加えて、野球を始めるにあたって必要な9人のメンバーを集めることすら難しく、あの手この手で奔走することとなった。
何とか9人が揃い、アメリカ人女性の英語教師・アンナ先生を監督に迎えて、ようやく結成なったチームであったが、学校側は生徒が“女だてらに”野球をすることを表立っては認めたがらない。そこでこれに配慮してチーム名は、新たな時代を見据えて優れた西欧(西歐)文化を吸収するとの建前の下「歐化(おうか)」に掛けられ、「櫻花會(おうか-かい)」と決められた。
そして晶子と小梅は、岩崎が所属する朝香中学の野球部に勝負を挑み、打ち負かして見返すことを目標に、また二人とメンバーの少女達は、何より自分達の青春の充実のため、ひたむきに野球に打ち込み始めるのであった。
(wikipediaより)
■レビュー
神楽坂淳の同名人気ライトノベルを原作にしたアニメシリーズで、コンセプトはアメリカで1992年に公開された映画「プリティ・リーグ(原題:A League of Their Own)」と似ていますが全く異なっています
プリティ・リーグのように女子野球リーグの大衆化や成り立ちではなく、大正は全くゼロからのチームを編成するところから始まります
キャラクターも大人の女性ではなく女子中学生を置き、とても陽気で愛らしくキュートです
このアニメシリーズは複雑な野球知識で視聴者を困惑させる事はありません
印象的なキャラクターの特徴描写、激しい野球アクション、一流の技術効果で感銘を与えてくれます
「げんしけん」などの作品で知られる監督の池端隆史は野球という要素より彼女達自身と歴史的背景を重要視しているように思えます
クライマックスの試合でも野球の技術より構造的な問題に目が向けられています
最初は全くスポーツを知らない彼女達が熱心に取り組む姿や、相手の強さにどれだけ追いつかなくてはいけないかについて考える純朴な姿など魅力的な部分がたくさんあります
そして露骨な"萌え"に依存しておらず、最近のアニメリーズとは一線を画しています
シリーズが支持されている大きな要因に時代設定が挙げられると考えられます
ストーリーを大正時代に設定したことで女学生の制服がセーラー服に移り変わる過渡期である事など色々な良い部分が取り込める用になりました
セーラー服と着物が混在するクラスなど欧米化による影響がシリーズを通して顕著に現れます
洋食店を営む小梅の家族も洋食店でありながら小梅と母親は着物を着ていたり、ストリートを人力車が走っていたり、
納豆売りが声を上げて歩いていたり、中学生で見合い結婚するのも当時の風潮です
そんな時代でありながら小梅の学校にはアメリカ人の教師がいますし、女性の社会的役割に対する偏見と開化した意見が交じり合い深い要素になっています
しかしこのシリーズは2000年代(2009年夏)に制作されたアニメなので、現代の典型的なストーリーテリングに大きく依存しています
女の子の身体的な演出や個性の分類はかなり標準的なものです
小梅のような主人公に近いキャラクターは目立ったり、大きな成長が描かれますがシリーズが進むにつれて半分は背景へと消えて行きます
昨今のアニメシリーズでもよく見られる好きなキャラの注意を引くためにしつこく付きまとったり、大切な試合に遅れそうになったり、アニメの義務とも言える入浴シーン(ファンサービスだがセクシーには表現していない)があったりと予想できるシーンがたくさんあります
しかしながら、女の子達に大敗を味あわせたり、あり得ないほど早く野球レベルを上達させるようなことをしないのは賞賛に値するでしょう
晶子の「魔球」も基本的にはスライダー(正しくはシュート?)なので野球の範疇を超えるようなボールではありません
女の子達が身に着ける野球のユニホームも可愛さと時代性、実用性に上手くバランスが取れていて、「プリティ・リーグ」のようにスカートを強制しません
キャラクターデザインも標準的なキャラの魅力的な部分を上手く混ぜています:
常に頬を赤く染めている小梅のようなキャラから、メガネのお下げ髪、ショートヘアでしなやかな女の子、モデルのような女の子、小柄な女の子(ショートヘア、ロングヘアのバージョン違い)、などなど
アメリカ人教師は期待通りのグラマー体系でブロンドです、ちなみに野球で対戦する男子キャラはまったく特徴がありません
背景美術は水彩画で描かれているかのような印象を受けますがキャラクターの絵とあまり違和感を感じませんでした
アニメーションのクオリティも女子と男子の投球フォームを見事に描き分けており素晴らしいものがあります
音楽はスレイヤーズシリーズで有名な服部隆之が担当し、全体を通して統制されたスコアがシリーズを盛り上げ夢中にさせてくれます
他にもミュージカルシーンでキャラクターが歌う大正時代の歌謡曲や、メインキャラ4人が歌うOPソング「浪漫ちっくストライク。」は一度聴くと頭から離れません
小梅役の伊藤かな恵が歌うEDソング「ユメ・ミル・ココロ」も陽気で楽しいナンバーです
声優に関して言うとメインキャラを演じる日本語キャストはとても素晴らしい演技をしてるのですが、男子学生の声は年をとり過ぎているように感じました
英語教師のアンナ・カートランドが使う英語も全くアメリカ人とは思えないほどの発音ですし
Sentai Filmworksからディスク2枚組みでリリースされた本作品ですが、英語吹き替えも特典映像も収録されていません
しかしながらスクリーン上には、大正という時代設定についての解説が字幕として表れるので文化の問題については理解しやすいと思います
例えば10話ではカレーが当時珍しい料理だったという事の解説や、歌詞の日本語が意味をなさない言葉であるため訳せなかった理由などが字幕によって表記されています
まとめに入りますが「大正野球娘。」では性的役割と団体競技の本質を文化が変わり行く時代と社会を背景に解説している作品です
女の子達が野球チームを作るということは彼女たちとって社会的活動と同じという印象を与えてくれます
これらのメインフォーカスに付随して、可愛さや、水を離れた魚のようにユーモラスな部分がアクセントとして盛り込まれて居るためシリーズはとてもマイルドな仕上がりです
レーティングもTV-PG(保護者の判断を要する)なのでとても気持ちよく観れるのではないでしょうか
普段、アクションアニメやハーレムアニメばかり観ている人たちに箸休め的な意味でピッタリな作品だと感じました
全体評価(字幕):B
ストーリー:B
アニメーション:B+
アート:B
音楽:B+
長所:素敵な可愛さ、驚くほど素晴らしいアニメーション、キャラクターとコスチュームデザイン
短所:掘り下げが浅い、プロットミスが目立つ
by Theron Martin
■スタッフ
監督:池端隆史
脚本:天河信彦 池端隆史 白石雅彦
絵コンテ:芥川瑛太郎 福冨博 池端隆史 二瓶勇一 渡部高志
演出:伊佐英朗 久原謙一 松川朋弘 奥野浩行 山内東生雄
則座誠 高島大輔 上野勝 渡辺健一郎
音楽:服部隆之
原作:神楽坂淳
原作イラスト:小池定路
キャラクターデザイン:神本兼利
美術監督:小林七郎
総作画監督:神本兼利
作画監督:赤尾良太郎 新井伸浩 原修一 平川亜喜雄 兵渡勝
松本文男 松浦麻衣 さのえり 柳伸亮 滝本祥子
石田啓一 神本兼利 梶谷光春
音響監督:本山哲
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[Pandadiceさん]
B評価ってマジ? ウソじゃないよな?
自分は全く好みに合わなかったわ、このレビューはアテにしない方がいいかと....
スポーツアニメとしてもそこまで良くないし、百合アニメとしての出来も良くない
ロマンス要素も不十分で特に美少女アニメとして優れているとも思えない
観る価値が高い作品じゃない
[Megiddoさん]
えぇ? 「大正野球娘。」はかなり中身のあるタイトルだと思うんだが
理由はアニメとしては珍しい大正という時代が舞台になっている点、
あまりアニメでは扱わないジェンダーをテーマにし、勝負に女性の意思が尊重されている点
私としてはB評価がそこまで的外れと思わないが万人の琴線に触れるような作品じゃ無いのも理解できる
でもユニークで面白いからほとんどの人は楽しめる作品って事でいいじゃん
[Thalliumさん(オランダ)]
スポーツ好きの30歳男だが、関心を持たれなかったのはレズ要素が影響しているのかな
私はそれでも楽しかったけどね
大正という時代設定もそこまで頻繁に使っているようにも感じなかった
個人的にはスポーツ要素にキュートなアニメを混ぜたのが良かったね
傑作とまでは行かないけど、B評価とも思えない
[pachy_boyさん]
B評価なら妥当だろ!
不満点を挙げるとすれば私も男子が実年齢より上に見えた事かな
意図的に調整しているのかと思ったわ
一言で表現するなら大正版「プリンセスナイン」だよね
フェミニストをテーマに女の子たちのグループが保守的な文化に対抗するわけだから
[albanianさん(イギリス)]
傑作とは言えないけど傑作になりえた作品だとは思う
シンプルに言うと実直で観た人を笑顔にさせてくれる作品かな
そこに社会的なコメンタリーを退屈の無いように入れ込んでいる
最近あまり無い注目に値する作品だね
[here-and-farawayさん]
リアルスポーツには一切興味がないのに、スポーツアニメには心を動かされるわ
特に「はじめの一歩」、「おおきく振りかぶって」、「クロスゲーム」、「スラムダンク」などなど...
こんなにも面白いタイトルがアメリカで成功しないなんて残念でならないよ
Sentai Filmworksには「大正野球娘。」で一発当てて欲しいなぁ
ファニメーションが失敗したおおきく振りかぶっての2期も発売してくれたら最高なんだが...
[Lord Geoさん]
大正野球娘は「アイシールド21」に続いてSentai2本目のスポーツタイトルだね
おおきく振りかぶっての2期も面白かったから発売して欲しいけど個人的には「リングにかけろ1」を出してくれ
[Takeyoさん]
作品のオリジナリティを挙げると:
a)大正という時代性
b)女の子達が何もせず座っているだけでなくスポーツに焦点が当てられている点
これらを考慮して私はB+の評価をつけたいと思う
正直言うとSentaiはよくこのタイトルを発売したよな、見直したよ
ウチのHDTVで観たけど結構良かったわ
補足で字幕が出るのもいいんだけど学校の名前を何回出すんだよって感じ
必要ないところも訳して字幕にしなくてもいいのに
それに"dude"とか言ってる小学生がいたり、"sucks"とか言ってる中学生がいたり....
現代が舞台のアニメならいいけど大正時代なのにお前らはサウスパークかって思ったよ
[GrilledEelHamatsuさん]
野球アニメって日本でもアメリカでも売れてないみたいだね
「大正野球娘。」は去年のヒットTVシリーズだったのにDVDの売上は芳しくなかったみたい
野球アニメで最後の超大作って1985年の「タッチ」かな
[Cryssoberylさん]
「プリンセスナイン」好きな私としては「大正野球娘。」が楽しめないなんてあり得ない
裏に隠れた百合要素とか萌えに頼る事無く可愛さを演出した点は評価できる
シリアスなフェミニストテーマも前向きな扱い方をしていたね
プリンセスナインのフェミニストテーマは偏狭な学校の態度と男社会のスポーツがメインで、
大正野球娘も同じテーマに触れているんだけど、その上のレベルで立ち向かってる感じなんだよ
(http://www.animenewsnetwork.com/)
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↓ここからamazonカスタマーレビュー
[B. Sounthonevichithさん(テネシー州)]
タイトル:楽しい作品(★★★★☆)
アメリカではスポーツアニメがあまり発売されないため、最初に発売を知ったときはハッピーだったよ
この作品は女の子達が野球チームを作り、試合を通じてルールや技術を積み重ねて成長していく典型的な王道スポーツアニメかな
普通のシリーズと違うのは1920年代という欧米化が進む日本が舞台になっている点と全12話の短いシリーズであること
「タッチ」や「H2」ほどは面白くないかもしれないけど全12話という制約の中では悪くない作品だと思う
少なくともスポーツアニメが好きな人にはオススメできるね
私も12話全て楽しめたから不満は無いよ
[Steveさん(ワシントン州)]
タイトル:女の子達の素晴らしいアニメ(★★★★★)
女の子のスポーツアニメ、所々に甘すぎるほど甘ったるいシーンがあったりするけどそこが良いね
原作はヤングアダルト小説でターゲットも青年向けかも知れないけどコレなら最高のディズニー映画が作れると思う
物語は「東京節」を通じて関東大震災前、1920年代の東京の紹介から始まる
ストーリーとは直接関係無いが移り行く国の変遷や生活がよく分かるシーンだね
プロットは保守的なフィアンセを見返すために女子学校に通う女の子が野球チームを作るストーリー
プロセスは9人のメンバー集め、悪戦苦闘しながらの第一歩、強い意志を持ってのトレーニング、そして最終試合へと展開する
途中でブロンドのアメリカ人教師(服装はピンクで1990年代風)から野球の基礎を学んでいき、偶然に"魔球"ナックルボールを発明したりキャッチャーがピッチャーにサインを出したりと成長していく
あまり深くキャラクターを掘り下げられていないが、それぞれの個性はきちんと描写されている
彼女達が成長していくにつれチームワークが上がり強くなる、大正野球娘の価値はここにあるのではないだろうか
「おおきく振りかぶって」と違って野球のディティールにはあまり期待できないが、それを感じないほど大きなものがあると思う
収録されているのは字幕のみだけど、スクリーン上にはあり得ないほどの注釈が現れるので面食らうよ
アートワークはリアリスティックで背景は水彩画のような感じ(アニメ絵じゃない)
大正野球娘は誰にでもオススメ出来るし、10代の若者とか思春期の娘に見せてもいいんじゃないかなと思ってしまった
言及する必要は無いかもしれんが最後に一言、彼女達は1920年代半ばで14歳~15歳だから第二次世界大戦が始まる頃は30代でしょ
不謹慎だけど東京の空襲で亡くなっている可能性が高いよね
(http://www.amazon.com/)
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大正野球娘はジェンダー、放浪息子は性同一性障害・・・みたいに若干型にはめたテーマで理解をしたがるよねー、あちらの人は
| No Name | 2011/02/20 02:02 | URL |