The Dreams of Satoshi Kon: 第三章 - Timeless(時間を超越)
アニメはもちろんのことフィクションを取り扱う作品は人生の表現を実現しようとしています
今敏監督の劇場用長編第2作「千年女優」は人生だけでなく,その範囲を超えた表現がなされています
この映画ではストーリー展開に時代や現実を織り交ぜたトリックが施されており,視聴者を主人公"千代子"の人生の中へ引き込んでいきます
前作の「Perfect Blue」のように今監督は女優を中心に置き,コンスタントに物語は進みます
本編では千代子の出演作品と自分の思い出とがリンクし,作品ごとに区切られ物語が形成される手品のような手法です
「千年女優」が独特で優れているのは現実とその向こう側(観客やファンも)を同一と見なし結合している点です
観客が役者と同じくらい重要であり,映画スターとビューアーの間で相互作用を引き起こす魔法のような瞬間を作り出しています
ストーリーは古い歴史を持つ映画会社「銀映」の撮影所が取り壊されてしまうため,立花源也はドキュメンタリー企画として大女優"藤原千代子"のインタビューを行う所から始まります
千代子の大ファンだった立花は女優を引退し隠居生活をしていた千代子を探し,やる気の無いカメラマン井田恭二と共にインタビューを取り付けました
そして彼女のジェットコースターのような人生を追体験するように物語は出演映画へと移り変わっていきます
関東大震災の年に生まれ,第二次世界大戦,激しく動く政治など藤原千代子は嵐のような世の中と人生を歩んで来ました
しかし千代子はその人生を顔も思い出せない画家の男性を追う事に費やします
ある雪の夜,千代子は警官に追われていた画家の男を蔵へ匿いますが「一番大切なもの開ける鍵」を残し姿を消してしまいます
必ず会うと約束した千代子は監督や女優から邪魔をされながらも残りの人生をその約束を果たすために費やします
千代子は日本の映画に数多く出演した大女優"原節子"がモデルと言われています
彼女も千代子同様,30年代から60年代に活躍した映画スターです
(今監督は貧困や社会と戦う成瀬巳喜男監督作品数多く出演した高峰秀子の名前も挙げていますがモデルは原節子だと述べています)
私達は千代子の人生と彼女の記憶を追っていき,その糸に女優としての役が絡みつきながら展開するため,現実なのか映画なのかまったく見分けることは出来ません
次第に大ファンの源也が千代子の映画で主要な役者として演技を行うようになり,様々なコスチュームで千代子のサポートに現れます
このアイデアは明らかに天外の奇想と言えるでしょう
一方,カメラマンの井田は心を開いておらず難くせをつけるようなビューアーとして事の成り行きを見守る立場にいます
この映画には何度観ても視聴者に喜びを与えるパワーを持っています
そしてその喜びには平沢進の音楽によるものでもあります
千代子の青春と映画の歴史をオーバーラップさせ,馬,馬車,オートモービル,自転車と目まぐるしく時代は移り変わります
古いビジュアルに電子音は耳ざわりに思えますが,音楽は心地良くミスマッチによりインパクトは強烈な物となりました
長年,今敏は彼のアルバムを聞きならが仕事をするほど平沢進のファンでした
今監督はストーリーやおおよそのアイデアを平沢氏に伝え,先に音楽を作り,音楽を聴きながら脚本や絵コンテを肉付けする通常とは逆のアプローチを取っていたそうです
通常音楽は映画で一番最後に完成するものですが,今監督はそれだけ重いポジションに平沢氏を置いていたと言うことになります
物語の重要な要素である画家の鍵は最後まで何を開けるものか全く明かされないままで,千代子が最後に発する言葉も同様に視聴者側での推論に任せています
しかし,こういった議論は要点を捕らえていないように思えます
千代子がそのキャリアを通して画家の男を探していた事については無駄であったかもしれません,鍵も記念品のような物で最初からミステリーな物でした
千代子は賢い女性なので初めから彼のことに気付いていたでしょう,おそらく彼女は心の奥底で何が現実かを理解していたはずです
ドリームワークスによってリリースされた「千年女優」には多くのファン達から辛辣なコメントが寄せられました
扱いもぞんざいでアメリカンなわざとらしい芝居になっています
今監督自身もアメリカで作られたポスターやDVDアートの問題によりサインを拒んでいます(「これは千代子じゃない」と言ったとか)
マーケティングサポートもほとんど無く,ロサンゼルスとニューヨークの劇場でひっそり公開されるだけでした
DVDは現在絶版となっており中古市場なら見つけることも簡単ですが,価格はやや上昇傾向にあるようです
ブルーレイではまだリリースされていませんが,WOWOWでHD放送されるということはHDマスターの存在を意味します
おそらくブルーレイ版の発売も時間の問題でしょう
by Justin Sevakis
http://www.animenewsnetwork.com/feature/2010-09-08/2
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[Charred Knightさん]
絶版なのは残念だよね,プレミア価格で値段も高くなっちゃうし
私が覚えている範囲だと新品で30ドル,中古で20ドルくらいだったと思う
[vashfanaticさん(アメリカ)]
でも手元に置いておきたいタイトルだから,手に入るだけで嬉しいよ
私は古い作品を処分しようとしていた人から安く買うことが出来たけどね
この作品は私の好きなアニメ映画と言うより,映画として大好きな作品だから
[lostinagoodbookさん]
自転車のシーケンスが大好きだったなぁ
再会するチャンスも無く,時間を使い過ぎた千代子にガッカリしたのを覚えているよ
男を探すことが彼女の人生の理由ではなく,彼女のモチベーションだったんだね
[Julia-the-Greatさん]
ウォルマートでジャケ買いした作品だったけど今までで一番良い買い物だったかも
値段が上がってるとか聞くと本当に買っといてよかったわ,ビューティフルな映画
[Modandrockerさん]
映画ファンとしては黒澤明と小津安二郎への敬意が感じられて最高のボーナスだったよ
イギリス版とアメリカ版を買うくらい好きな作品だからブルーレイ版も出して欲しい
[Greboruriさん(オーストラリア)]
この映画には日本映画のオマージュがたくさんあるんだよね
例えば「トラック野郎」のようなものから,黒澤明やゴジラと言った有名なものまで
私の中でこの映画は引退した女優の思い出に乗せて日本映画の誕生・死・再生を表したものだと解釈してる
[darcerinさん]
どれくらい人気がある作品かは知らないけど千年女優は今までで一番好きな映画だよ
Perfect Blueを観たときはあんまり感動もしなかったけど千年女優はヤバかった
[Gilles Poitrasさん(カリフォルニア州)]
英語と日本語で書かれている「千年女優画報」は素晴らしい出来だからamazonで探してみるといい
アメリカのamazonで買うと高いから日本で買ったほうが安いよ
[DKLさん(カリフォルニア州)]
あの鍵は画家の絵の具ケースを開けるためのものでしょ
画家にとって大切な物は絵の具であり,革命のために描かれた絵と仮定したほうがいいと思わない?
「当ててごらん」と言われた時もカメラがケースを映してたじゃん,あくまで仮定だけど....
だからあの鍵はそこまで重要なものではないよ
[Tortoiseshell Tabby Girlさん]
ロジカルで良い解釈だけど,比喩的な表現では重要な意味を持っているんだよ
私の心を掴んだシーンは戦争によってバラバラになった蔵の壁に千代子の肖像画が描いてある所だね
兄と一緒に小さなシアターで観たんだけど彼も泣きそうになってた,兄が泣くなんて若いときに観た「U・ボート」以来だよ
[gartholamundiさん(フロリダ州)]
鍵は「パルプ・フィクション」に例えるとスーツケースみたいな存在だろうか
観衆はスーツケースによって射殺されるっていうのは分かってるけどそれ自体が何であるか知らされないでしょ
[DmonHiroさん(ルーマニア)]
こういう時はエンターテイメント後進国で良かったと思ったりしなくもない
未だにビデオショップに行けば普通に買えるから
[Maximus44さん]
千年女優はアニメが好きであることを思い起こさせてくれる作品かな,定期的に観たくなる
(http://www.animenewsnetwork.com/)
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| No Name | 2010/10/02 07:49 | URL |